DXの定義を違う視点から考えてみた
ビジネスの世界でDXという言葉が囁かれて久しい。日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が有名になりはじめたのは2019年秋頃ではないかと記憶している。一般的なデジタル化やIT化とは異なる文脈で、マネジメントや人事・採用、ひいては経営までもをデジタルの力を使って変革するという意味で使われ始めたのを記憶している。Wikipediaによると以下の通りだ。
デジタルトランスフォーメーションという言葉の初出は、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授のエリック・ストルターマン(Erik Stolterman)が “Information Technology and the Good Life” の中で提唱した。ストルターマンは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義し、下記の特徴を提示している –
Wikipedia
DXの定義
組織におけるDX
DXはデジタル化とどう違うのか?この疑問に答えるためには、DXが組織の中でどのような役割を果たすかを考えるのが近道だろう。スイスのビジネス教育機関IMD(International Institute for Management Development)によると、組織におけるDXの役割とは以下のようになる。
つまり、部門単体でデジタル技術を使ってビジネスモデルを変革する場合、それはデジタル化と呼ばれる。一方、組織全体での変革をこそDXと呼ぶ。影響範囲(による複雑性の変化)において、組織に最大の変革をもたらすものがDXであると定義されている。
開発者体験としてのDX
ブラジルでAPI管理のプラットフォームのプロダクトを提供するLinkApiの共同創業者であるAlbert Cavalcanteはブログで、DXとは開発者体験であり、UX(ユーザー体験)と同等に重要なものである、と語る。彼の定義によるとDXとは、ユーザー体験と開発規範の混ざりあった部分に存在するという。
これはDXをDigital TransformationではなくDeveloper Experienceという違う文脈から受け取った解釈ではあるが、日本CTO協会では、この2つどちらも含めてDXであるとしている。以下は日本CTO協会のウェブサイトに掲載されている文章の引用である。
本基準の指し示すDXとは、企業のデジタル化(DX:Digital Transformation)と参画する先端ソフトウェア開発者体験の良さ(DX:Developer eXperience)の2つを横断したものとして定義しています。
日本CTO協会
ここで言うDeveloper Experienceは前述のAlbertのDXと同じである。筆者はDigital transformationもDeveloper experienceも企業や組織にとって必要であると考える一方、Developer experienceに関しては違う解釈をしている。
IoT革命に代表されるように、すべてのデバイス、人の行動、生活にはソフトウェアが組み込まれている。事業においても、コミュニケーションなど生活全般に必要な活動においても、ソフトウェア抜きでは語れなくなってきていると感じる。日本では昨年よりプログラミング教育が義務教育で必修化された。このような背景から鑑み、企業や組織がDXに取り組む上で、DXに取り組む人々が「開発者体験」をすることが必要である。文字通りソースコードを書く作業を行わなくとも、プロダクトデザインを考えたり、データを計測して意思決定したり、顧客満足度をあげるための施策を考えるなど、「開発者」としての体験を有すること自体が重要である。